トライエンジニアリング株式会社は、RHS[ロボットヘミングシステム]のパイオニア。愛知を窓口に世界中で活躍しています。

HOME > TRIを知る > 世界にはばたく技術者

TRIを知る

世界にはばたく技術者

職人という言葉が持つ独特の頑固さは、この場所にはない。
彼らをなんと呼ぶべきか。そう、技術者だ。

岡部長(取締役 統括本部 部長)

トライエンジニアリングの機械が動いているところを、われわれ一般の市民は見ることは少ない。だが、その機械が加工したものは、いつも目にしている。自動車である。

「自動車のドアとか、ボンネットとか、そういうものの縁(へり)を内側に折り込む装置なんですよ」

トライエンジニアリングの岡部長(取締役 統括本部 部長)がにこやかに教えてくれた。

「こういった部品は、うちのシステムができるまではみなプレスで整形していたんですよ。でも、スペースもいる大きな装置で大変なものでした。そこでこのヘミングシステムが生まれたんです」

ヘミングの原理は簡単だ。
折り紙を折り曲げたとき、きれいに線をつけるにはどうするか?ベタッと手のひらで押すことはない。爪先でスーッと軽く押さえつけることになる。軽い力で綺麗な折り目をつけることが出来るのは、もちろん後者の方だ。
トライエンジニアリングのロボット・ヘミング・システムはこの応用である。折り紙がボディの一部になる鋼板、指は、頑丈な鋼鉄製の腕の先に取り付けられた油圧ユニットと小さなローラーだ。
「この分野では当社がパイオニアなんです。国内の全ての自動車メーカーに納めているのはもちろん、アメリカ、ヨーロッパ、中国など海外の自動車部品メーカーに使ってもらっています。五大陸の全てにうちの機械が据え付けられていますよ」そういって岡部長ははにかむように笑う。その笑顔はあくまで柔和で、きらきらと光る目はまるで少年のようだ。しかし物事の本質をまっすぐに見通す意思の強さがあった。

「海外に機械を送る際、色々と困ることがあります。日本では何の苦もなく手に入るような部品…例えばシリンダーなどが、簡単に手に入らないこともあります。」

設計技術グループの瀬見井グループ長が、CADに向かう手を止めて、我々に話してくれた。

「現地のスタッフや当社の営業を交えて、現地で購入するにはどうするか、あるいは現地で手に入りやすい部材に交換できないか、何度も検討しました」

設計技術グループはトライエンジニアリングにとって、機能面の頭脳である。営業が引き出してくるクライアントのニーズを受けて、要求される仕様を満たす為の検討を重ねる。1台のCADを囲んで、設計と営業が深夜まで打ち合わせをすることもある。

「大学では機械工学を専攻し、トライエンジニアリングに就職しました。10年目になりますが、ここまであっという間でした。最初は仕事の進め方を覚えて、来た仕事をこなす。とにかくがむしゃらでしたね」

瀬見井グループ長は38歳。地元愛知県豊橋市の出身だ。普段の生活の反動なのか、休日はあえて何も予定を立てず、気の向くままに車を走らせる。2006年、初めて仕事で海外に出張した。

「台湾の自動車部品メーカーに伺い、装置の立ち上げを行いました。それが当社とその会社との最初の取引だったんです」

―それは相当緊張したんじゃないでしょうか?
「とにかく緊張しましたね。不安も感じました。作りこみの精度に、ものすごく高いものを要求され、その一方で、現地の作業者に対して出来るだけわかりやすく、インストラクションをしなければなりません。クライアントのプロジェクト担当者と何度も打合せを行い、信頼を築き上げねばなりませんでした」

我々が取材に伺ったとき、ちょうど出荷直前の機械を見る機会があった。

工場に入ったわれわれに、岡部長が小声で耳打ちした。
初めて目にしたロボット・ヘミング・システムは、意外なほど小さく、想像していたような威圧感のある機械ではなかった。むしろスマートな印象さえ受けた。

「加藤君、ちょっとティーチングの真似してぇな。写真とるで」

岡部長の指示を受けた製造技術グループの加藤氏は、出荷前の忙しい中手を止め、嫌な顔ひとつせずわれわれのために機械を動かしてくれた。機械の稼動する音が響き、静止していた機械は命が宿ったように動き出した。アームが滑らかに動き、その先端にマウントされたローラーが、加工物を載せる台の周辺をなぞっていく。

加工物を押さえるクランプが、ローラーの進路を空けるために軽快な音を立てて上下する。全ての動作が音符のように、一連の旋律に則って動き始める。それは、ちょうど精密な機械式腕時計の内部を覗き込んだ時の様な、新鮮な感動を我々に与えてくれた。

ロボット・ヘミング・システムはトライエンジニアリングの技術スタッフが、クライアントのニーズを探り、それを満足させるものを作り上げることで、急成長した。

「それまでプレスが当たり前だった業界に、このロボット・ヘミング・システムで切り込んでいったんです。最初は楽じゃなかったと思いますよ」

先ほどの瀬見井グループ長の言葉が思い出される。

「今ではパイオニアとして、他のメーカーに追いかけられる立場になりました。抜かれないように常にいいものを創っていきたいですね」

―いいものとはなんでしょうか?
「それは…やはり、ユーザーの視点から考えてみることでしょう。僕たち技術者は技術だけを売り込んじゃいけない。常にユーザーの視点から自分たちを、自分たちのつくった機械を観察することで、ユーザーの使いやすいものを創れるんじゃないでしょうか」

―5年後、10年後はこういう仕事をしていたい、とかそういう希望はありますか?
瀬見井グループ長は腕を組んでしばらく考えた後、こう答えた。

「今はとにかく夢中で、そんなこと考えられないですね。あえて言えば、そう、違う分野の技術を吸収して、それをロボット・ヘミング・システムに応用できればいいですね」

技術者は常に現状に満足していない。常に「何か」を探しているのだ。

PAGE TOP